会長挨拶

第7代会長就任のごあいさつ

2019年12月吉日
可知直毅(首都大学東京)

宮古島大会中の2019年10月26日に開催された日本島嶼学会総会において、第7代の会長に選出されました。任期は、2021年9月に宮城の気仙沼大島で計画している大会中の総会までの2年間です。2名の副会長、2名の常任理事、13名の理事、2名の監事、2名の参与とともに学会運営にあたります(役員名簿については、こちらをご覧ください)。

学会誌の発行、ニュースレターと年報の発行、ホームページを活用した情報発信、年次大会や研究会の開催、学会賞(研究奨励賞部門および栄誉賞部門)の授与、関係国際学会との連携など、これまで継続してきた各種事業をさらに充実させるとともに、会員サービスの向上にも努めたいと考えています。

当学会は、「島」をめぐる学際的・職際的・国際的な研究を通じ、総合的な学としての「島嶼学」の発展に資することを目的に1998年に設立されました。私は、小笠原諸島を主なフィールドにして、外来種のヤギが駆除された島での生態系の変化や外来樹のギンネム、アカギ、モクマオウの侵略性がどのように決まっているかなどについて生態学的な視点から研究しています。

バックグラウンドは、本会の中では少数派の理系(生物学)ですが、学会活動を通して、文系、理系の枠を越えた学際的、総合的な「学」としての島嶼学の発展と「島」の振興に貢献することをめざして、微力を尽くしたいと思います。

会員の皆様の「島」にかかわるさまざまな活動を基盤とした年次大会や研究会への貢献や学会運営へのご協力をいただけますよう、心からお願いいたします。

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第6代会長就任ご挨拶

2015年10月吉日
中俣 均(法政大学)

本年9月の奥尻島大会で、会長職(第6代)を拝命しました。図らずも、とはこういう場合の常套句ですが、今はそれが文字通りの偽らざる心境です。

本学会の最大の特徴は、会員それぞれがさまざまに、拠って立つ多彩な学問分野的基盤や社会的職業的役割を有しながら、島への深い愛着を共有して集いあっているところです。それは、島々が直面する現実の諸問題の解決(島をどうするか?)に腐心することから、島という実存的・社会的空間のありようの解明(島とは何か?)に主眼を置くものまで(自分ではいくらか後者に近いかなとの自覚あり)、本学会の幅広い関心領域としてこれまで現れてきました。そうした多様性・多面性を尊重しながら、バランスのとれた島嶼学の確立を目指したいと思っています。

前会長を筆頭に、歴代会長が具備されていたようなカリスマ性は、悲しいかな持ち合わせてはいませんが、学会設立20周年の節目となる記念事業への諸準備と、それを通じて島嶼学Nissology を広く社会にアピールする(具体的には会員数の増加)こととを、2年間の任期中の目標として掲げたいと思います。また、私自身は学会設立時の発起人の一人で、いわば第一世代に属しますが、それに続く第二世代が縦横に活躍できる学会基盤を作り上げる「架橋」役も、重要な務めになるでしょう。会員諸氏の日常活動を土台とした斯学への貢献と、学会運営へのご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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第5代日本島嶼学会会長就任あいさつ

2013年9月吉日
長嶋俊介(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター教授)

2013年9月、日本島嶼学会年次大会の総会に於いて、第5代目会長として、指名を受けました。初代会長は離島振興法成立とその後の進展に深く関わられた山階芳正氏、二代目は日本地理学会元会長の竹内啓一氏、三代目は国際島嶼学会設立に深く関わられた嘉数啓氏、四代目は離島振興一筋かつ本学会総務を支え続けていただいた鈴木勇次氏でした。その歴代会長と比して非力ではありますが、学会発展への使命を達成すべく、全精力を傾注して対処いたしますので、ご協力のほどよろしくお願いします。

日本島嶼学会の胎動は、1994年6月22日~26日の国際島嶼学会設立総会(沖縄)の時に始まりました。学会設立に向けての会合文書を回覧し、その期間中に設立発起人会を開催できました。それ以降の経緯は、『年報』創刊号の171-173頁に掲載しています。

滑り出しは幸運続きで、新聞各紙などを通して、全国の関係者に周知することができました。とりわけ離島振興関係者と島愛好家各位にも、その必要性への認知と、設立に向けての賛同と賞賛を得ることができました。その熱意は、1953年7月の離島振興法設立当時から、本来あるべきものがついに出来たという、待望論・熱望論を受けてのものであったと思います。「50年前にできていて不思議ではなかった」ものが、未だにできない、もどかしさを人一倍感じていたものとして、「誰かが始めるしかない」という想いに駆り立てられての始動でした。

以来約20年、設立準備を含め学会事務局を担ってきたものとして、歴代会長をはじめ学会幹部・理事の方々にまずお礼を申し上げたいところです。学会事務は専任を必要とするほど、間断なく、時に多忙でした。また、公的で、厳正かつ正確でなければならないものです。学会自体も、社会的人格として、学術的公益を実現するものとして、組織化された活動を必要とします。そのような活動を支える実務は、緊張感を求められるものです。元々専任ではないものひとりでは背負いきれないところを、各理事はじめ会員にはいろいろ助けていただきました。意思決定に関わる総務(いわば国会:総会・理事会に相当する役職)、執行組織である庶務(いわば行政機関:会計・会員管理・会報発行・渉外・事務局に相当する役職)を歴代の関係各位が快く分担していただきました。また学会の命であり、学術活動の血液循環、骨格である年次大会(地方大会・共催行事等)での研究発表、学会誌の継続的刊行にも多くの関係者(とりわけ開催地自治体・大学等)の協力と参加を得て、その歴代担当者が適任的職責を快く全うしていただきました。多大な尽力と成果に大感謝です。

しかしながら、学術団体としては、まだまだ発展途上にあるといわざるを得ません。学術の水準を、いかに深く(第一課題)、いかに広く(第2課題)、いかに豊かに(第3課題)発展させていくのかが課題です。「深さ」は専門性です。研鑽(自力・自立相互支援)と体制(審査)と真摯な討論(協働)が求められます。「広さ」は学際性と多様性の受け入れです。許容量の大きさのみではなく、自分とはやや異なる分野・立場・立論・手法への理解が求められます。国内外の学術団体との交わり・相互発信や、その成果の相互受容・共有・深化も大切です。「豊かさ」は、島嶼学Nissologyそのものの多次元的可能性の発展的追求にあります。コアに隔絶性・孤島性などInsularityがあるとしても、島嶼の実態はその枠を超えて存在しています。その総体とそれを成立させている核と縁辺そして文脈を、学芸をも交えて、総合的にとらえ直すことです。科学的専門性+科学枠をも超えた学術可能性+学術・社会両面での具体貢献可能性+島嶼学そのものの成立要件(原論展開)の理解共有と熟度の達成+島嶼学の学術的総合性を担保する多様な専門家獲得と協働実現等がいまなおスタート地点にあります。それらは意識的目標設定とたゆまぬ工夫を重ねた学会活動の上に構築されるものであるともいえます。

学会設立当時からの理念を改めて確認しておきたいと思います。学際・職際・国際・地域際を前提としつつ、「島での(調査・研究・交流を大切にする)」、「島の=島人を主人公とする(島とかかわり合いの深い当事者性への配慮と理解を尊重する)」、「島のための(島そのものの学術発展・地域貢献・多次元振興への寄与を目指す)」学術団体でありたい。「島から(人・活動・自然等の現場で)」学び、「島そのもの」を(島嶼振興そのものでなくとも多次元に)研究し、謙虚、緻密かつ正確な成果を残すことにより、「島と島以外に(大陸以外の陸域は基本時にはすべて島嶼:海域は地球面積の2/3:その意味では全地球的)」役立つ、学問の確立と発展にともに挑戦し続けたいものです。

引き続き関係各位に於かれましては、学会組織・学術活動・社会貢献可能性の発展に向けて、積極的な関与並びにご支援ご協力のほどよろしくお願いいたします。