新型コロナウイルスの流行により,全国に緊急事態宣言が出されています。私たちは島を研究対象としておりますが,私たちは今,島には行きません。私たちの行動が島の安全を脅かすことを,島のことを知っているからこそ,私たちは心の底から恐れています。
島は小さくて人口が少ないだけではなく,医療・福祉・教育をはじめとする,あらゆる生活基盤が零細で脆弱です。島では,生活に欠かせないあらゆる機能が,コロナウイルスの流行によっていとも簡単に崩壊します。本土のように,ここがお休みなら別のお店に行けばいい,というわけにはいかないのです。お店が1軒しかない島がたくさんあります。連絡船の乗員が感染すると,唯一の交通手段である航路が途絶し,本当の孤島になってしまう島があります。感染者が入院できる施設は,ほとんどの島にありません。本土でならば救える命も,島では救えません。
日本島嶼学会では,島と外部との人の往来を最小限にとどめることが,コロナウイルスの侵入を防ぐためには必要と考えております。その上で以下の3点を強く要請します。
- 本土のみなさん,ご自身の安全のためにも,そして何よりも島の生活基盤を守るために,観光や旅行での来島を絶対にやめてください。いわゆる「コロナ疎開」なんてもっての外です。
- 島のみなさん,島から出ないでください。みなさんご自身が本土で感染し,ウイルスの運搬者になる可能性があります。
- ご家族の介護などでどうしても島に行かなければならないみなさん,万全の備えを整えてください。島に行ったら2週間は外出を自粛してください。
島の人びとは,いつもであれば島外のみなさんの来訪を歓迎します。みなさんの来訪は,島に新たな活気と希望をもたらし,なくてはならない産業の礎を形作っています。実際のところ,最近の来島者の減少は,島の経済に少なからぬ打撃を与えています。経営危機に瀕した民宿・ホテル,お店や会社,生活が苦しくなった人たちが島には多数います。しかし,今しばらくは,来訪を思いとどまっていただきたいのです。
日本島嶼学会はこれからも,そして今後も,島の専門家集団として島のみなさんとともに島を見つめ,考え続け,実践します。「行くな来るなコロナ」が島の専門家からの最大の提言です。コロナウイルスが沈静化するまで,どうか島をそっとしておいてください。日本島嶼学会からの,そして日本のすべての島じまからのお願いです。
2020年4月27日
日本島嶼学会
会長 可知 直毅