離島学から島嶼学へ

離島学から島嶼学へ
~日本島嶼学会の歩みと展望~
日本島嶼学会会長 長嶋俊介

1 離島学の沿革

1)日本の組織的離島学の研究は戦後まもなく東京大学に事務局を置く「島嶼研究会」(会誌『嶋』,地理学民俗学等の学者集団が会員,世話役山階芳正、実質的には離島学)から始まった。

2)世界最初の離島振興法(日本初の議員立法:1953年7月)成立後は、離島市町村長を核とする日本離島振興協議会(初代事務局長民俗学者宮本常一)が離島振興を目的とし組織され、引き続き地理学・民俗学者達とで「離島学」を主として離島リーダー向けに啓発展開する。

3)国際離島学:離島政策を展開している欧米諸国やアジア・オセアニアとの組織的連携は1989年7月広島県(知事竹下虎之助)主催「海と島の博覧会」の国際招待会議で本格的に開始される。INSULA設立へのサポート役も果たす。 2 国際島嶼学とのリンクから日本島嶼学へ 1992年バハマのIsland of the World, シチリアのINSULA の2大会契機で1953年から40年胎動していた日本島嶼学会設立始動期に入る。1994年沖縄での第1回ISISA大会で日本島嶼学活設立準備委員会が発足して、調整が開始された。

2 日本島嶼学会

1998年7月設立総会が長崎ウエスレアン大学で開催された。その時、ISISA会長G. McCall氏から歓迎講演をいただいた。以来年次大会を島に関連する各所で開かれ、各種特別大会等を随時必要に応じて開催してきた。また関連する国際学会として、SICRI: Small Island Culture Imitative を2004年鹿児島で、2009年佐渡で開催してきた。

3 目指している学問的方向性

島嶼は隔絶性などに基づく経済的・社会的孤立性の下で、社会的課題を多く抱えてきた。しかしそれらを克服可能な社会的背景が生まれつつある現在にふさわしい学術展開を目指す。すなわち島嶼の持つ多様な可能性についてNissologyの概念と理想から展開を目指す。島そのものを純粋科学的視座から展開することも歓迎であるが、同時に学融的・学際的視座からの、新しい学問としての「島嶼学」可能性を探究していくものである。