第10回国際島嶼学会・参加記
高橋美野梨
2014年9月22日~27日にかけて、台湾の西方に位置する澎湖諸島にて、第10回国際島嶼学会(ISISA X, Islands of the World XIII)が開催された。台湾での開催は、2004年の第5回金門島大会(ISISA V, Islands of the World VIII)に続いて2度目。学会開催地となった国立澎湖科技大学関係者、澎湖県知事・県議、澎湖県馬公市市長、国立台湾大学関係者などの積極的な学会参加や充実した懇親会、エクスカーション・プログラムからは、国際学会を招致し、それを成功裏に収めようとする台湾側の高いモチベーションが感じられた。ISISAに初めて参加した私は、一つ一つの催しに派手な演出を施し、本家「お・も・て・な・し」顔負けのホスピタリティあふれるサービスに多少面食らってしまったのだが・・・。
大会には、基調講演や全体会議のほか、27のセッションがマルチトラック式に立てられ(うち5つは中国語セッション)、世界から延べ200名の研究者が参加し、115本のプロポーザルが提出された。独自の島嶼学コミュニティ(日本島嶼学会:JSIS)を持つ日本からは、JSISの会員を中心に10名超の研究者が集まった。異分野の研究者が集う国際学会では、しばしば専門用語に依存した議論が展開され、サークルの強化には貢献するものの新たなネットワークの構築には至らないことが多い。しかし、ISISA Xでは、島嶼学のアカデミック・コミュニティを創出し、島嶼学を志向する研究者や実務家のネットワーク作りに貢献すべく、セッションテーマもよく練られており、建設的な議論が行われていたように思う。
私は、今回の学会を通して、普遍的な科学と特定地域の動向とをバランスさせようと奮闘する多くの研究者に出会った。そして、純粋科学としての学術の発展と同時に、近代学問が抱える蛸壺的状況から学の脱‐制度化を目指そうとする多くの研究に出合った。それらは、学問の論理的整合性を追求していくことと同時に、学と学との関係性に力点を置き、その増殖性に期待する方法論的立場とも言い換えられよう。学際畑を歩んできた私にとって、ISISAのようなネットワーク志向型の学会は、とても居心地の良いものに感じられた。
学会最終日の総会では、「澎湖諸島宣言」の採択と同時に、次期大会のプレゼンテーションも行われた。2016年にギリシャ・エーゲ海諸島、2017年にオーストラリア・カンガルー島、2018年にオランダ・フリースラント諸島にて開催される運びとなっている。