瀬戸内海豊島で考えたこと

沖縄大学 宮城能彦

家島で行われた平成11年度島嶼学会研究発表会と坊勢島巡検の後、小椋先生をリー ダーに我々数人は、チャーター船にて豊島へ出発しました。

沖縄育ちの私にとって、瀬戸内海の島々は不思議な所です。おそらく、多くの沖 縄や奄美の人たちも同じだと思うのですが、たくさんの島々と海を思い浮かべよう とするとどうしても、澄み切った青空・珊瑚・コバルトブルー・きらめく太陽・熱 帯魚、といった色鮮やかな風景しかイメージできないのです。それは、島のイメー ジとしてはある意味で紋切り型で非常に貧困なものでしか無いでしょう。しかし、 南の島々しか見たことのない私のような人間は、島はたくさんあるけど珊瑚礁はな く、熱帯魚もほとんどいない、それでいてとても美しいといわれる瀬戸内海のイメ ージをどうしても頭の中で描くことができないのです。

そんな理由もあって、坊勢家島群島から直接豊島まで行く巡検があると知って迷 わず参加しました。

昨日までの雨が嘘のように晴れ渡った瀬戸内海をチャーター船は小豆島を見なが らあっと言う間に豊島に着いてしまいました。思った以上に近くに見える本州の山 並みと島々の多さ、その変化に富んだ景色に瀬戸内海クルージング初体験者は、珊 瑚礁がなくてもこんなにすばらしい景色はあるんだと初めて理解することが出来た のでした。

豊島では、豊島自治連合会でボランティアをなさっている市村さん達に、産業廃 棄物処分場跡や豊島全体を案内してもらいました。

聞きしに勝る膨大な量の産業廃棄物や、島全体の美しい風景を前にして、島旅初 心者は改めて実際に島に行ってみることの大切さが少しわかったような気がします 。

新聞やテレビからの情報によって作られた豊島のイメージは、島全体が産廃で覆 われていてもはや人間が生活するには適さない島というものでした。ところが、確 かに想像を絶する物凄い量の廃棄物とはいえ、豊島全体がゴミで埋まっているので はないのです。

それは決して、産廃の問題を過小評価しようとしている訳ではありません。この 問題は豊島のみならず日本全体の島や過疎地域が抱える問題の象徴としてその重要 性をどんなに強調してもしすぎることは無いでしょう。

でも、私が感じたことは、それ以上に島全体としてはすごく美しいところであっ たこと、そして豊島の人たちは島に誇りをもった心の豊かな人たちだということで した。次は産廃の島としてではなく、瀬戸内海に浮かぶ豊かな島として訪れたいと 思ったのです。

私がそのようなことを考えたのは、これも私が沖縄本島で生活しているからだと 思います。沖縄が何かと基地問題で取り上げられるようになってから、「基地の中 に沖縄がある」といった科白をそのままに受けとめている他県の人が多いことを知 りました。確かに、沖縄には信じられない程大規模な米軍基地があり、それが沖縄 での生活の様々な面に大きな影響を与えていることは確かですが、けっして沖縄= 基地ではないのです。そういった視点だけからは見えなくなってしまうもっと豊な 生活や自然が沖縄にはある。日頃そう考えている私自身が、豊島についてはゴミに 覆われた島というイメージしか持っていなかったのです。

実際に足を運んでみて分かる、自分の身体と行動で感じとる実感、少々大袈裟で すが、それを豊島に教えられたような気がします。

今回幸いにも、石井亨さんが豊島から県議へ初当選するというその場に居合わせ ることが出来ました。刻々と発表される得票数に一緒に固唾をのみ一緒に万歳が出 来るなんて、なんて幸せな島旅初心者なんだろうと思います。

今回の世話役の小椋先生や豊島の人たちに今でも感謝の気持ちでいっぱいです。