2014年9月5日
第1回日本島嶼学会研究奨励賞 選考報告
研究奨励賞授賞候補者選考委員会は、推薦のあった4名の候補者の研究業績について慎重に審査し、授賞候補者を選考しました。その結果をふまえ、理事会において、次の2 名の会員に第1回日本島嶼学会研究奨励賞を授与することを決定し、2014年9月5日の五島大会での授賞式において、長嶋会長よりおふたりに賞状と副賞を授与しました。
研究奨励賞授賞候補者選考委員会
委員長 可知 直毅
【研究奨励賞授賞者】(表記は五十音順)
・高橋美野梨 会員
(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター・日本学術振興会特別研究員PD)
・山本宗立 会員
(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター・准教授)
【選考委員】
・委員長 可知直毅(学会賞担当理事)
・副委員長 中俣 均(島嶼研究前編集委員長)
・委員 立石雅昭(副会長)
・委員 小西潤子(理事)
【選考経過】
5月1日 学会HPに応募要領広告
5月1日〜5月31日 推薦受付
6月1日〜6月24日 選考委員会にて授賞候補者選考
6月25日〜7月2日 理事会MLにて授賞候補者の予備審議
9月5日 理事会で授賞者を正式決定、五島大会において授賞式
【授賞理由】
高橋美野梨 会員
高橋美野梨会員は、島嶼学会会員として本会の活動に参加する中で、国際政治経済学の知見を活かしながら、極北先住民社会であるデンマーク領グリーンランドにおける自治論を築いてきました。特に、自治が議論される際の「考え方の原理」を批判的に検討した上で、新たな分析概念として「対外的自治」と「対内的自治」を導入し、権限として獲得した自治の性質を明らかにした点が高く評価されます。今後、これまでの研究をふまえ、気候変動に伴い資源・航路開発が加速化するグリーンランドの、延いては極北先住民社会の自治と気候変動の相関に関する実証研究にむけた展開が期待されます。
山本宗立 会員
山本宗立会員は、東南アジア島嶼におけるキダチトウガラシをめぐる食文化の由来について、精力的に研究を推進してきました。特に、フィールド科学をベースにしながら生化学的分析手法を取り入れて研究を進めている点がユニークであり、高く評価されます。アジア・オセアニアの島嶼部における文化資源としてのトウガラシ属の利用の研究は、トウガラシ属が導入される以前の文化構造の解明にも寄与する研究であり、近い将来、学界をリードする研究者として活躍が期待されます。